自然と繋がる漢方エッセイ

人と地球に優しい漢方的スローライフ。

【漢方エッセイ】塩分は体を温めるのか?

ある日、ぼんやりテレビを眺めていた。北海道ラーメンの食レポ番組だった。アナウンサーがラーメンをすする。『味が濃いですね』と感想を述べるアナウンサー。『寒い地域ですからね』と話すラーメン屋の店主。
何となく、寒い地域は塩分の味つけが濃い。そんなイメージはあると思う。私が住む東北も味つけが濃い地域だ。塩は体を温めるというのがその理由である。
 しかし、塩分過多は体に悪いというのは今日の常識になっている。私は低血圧で、医師に『もっと塩分を摂取したほうがいいですよね』と言ったら、医師に苦笑いをされたことがある。そんな冗談は言わないほうがいいと思った。

そんなあるとき、塩分を減らすと体にいい。そんなニュースをふと目にした。イギリスでは、スーパーやコンビニで売られている全ての食品の塩分を段階的に減らしていったそう。
8年間で1日あたり1.4gの減塩をした。そのことをイギリス国民は気づかなかったという。少しずつ減塩すれば苦痛にならないらしい。その結果、イギリスでは心疾患が減り、毎年2600億円もの医療費の削減に繋がったというのだ。減塩したほうがいいのだ。
日本人の1日あたりの塩分摂取量(平成30年)は、男性が11g、女性が9.3gだ。1日あたりの塩分摂取量の目標値が男性が7.5g未満、女性が6.5g未満である。高血圧のある人の目標値は6g未満。ちなみにWHOは5g未満を推奨しているそうだ。

日本人の減塩はなかなかたいへんである。日本もイギリスのように、全ての食品の塩分を段階的に減らしてみてはどうかと思う。そうすれば、その恩恵は計り知れないはずだ。
 さて、日本人が減塩するためのひとつのハードルが、塩分が体を温めるという観念があるだろうと思う。
塩分を摂取すると血流が良くなり、体がよく温まるという。そういう理由で寒い地域では濃い味が好まれる。そして寒い地域では脳卒中が多いという話もある。
本当に塩分は体を温めるのか?その答えが知りたくて、私は漢方の本を開いてみた。漢方の本によれば、塩の性質は『寒』だという。つまり、塩は体を冷やすのだ。私は頭が混乱してしまった。

それで私なりに考えてみた。漢方的に塩分には保湿作用がある。玄関に盛り塩をしていたら、塩が湿っぽくなっていた経験はあるだろう。それが塩の保湿作用である。
つまり、塩分を摂取すると体の水分が多くなるのだ。それで血流の流れが良くなり体が温まる。ここまで聞くと、塩は体に良い感じもするかもしれない。
しかし、この話には続きがある。塩分を多く摂取してると、体に水分を集め過ぎて体に水毒が溜まるのだ。この水毒が多くなると体は冷えるのである。ここが塩の性質を『寒』であるとしている理由だと私は思ったのだ。
 西洋医学から見ても、東洋医学から見ても、塩分は減らしたほうが良いといえると思う。私もイギリスの例のように、少しずつ減塩していきたいと思った。そうすればストレスも少ないだろう。体を温めるにはどうすればいいか。軽い運動を習慣にできたら理想だという思いに至る。